TOKYO24区 日本橋

「働く人」たちが主役の新しい街づくりプロジェクト

『TOKYO24区 日本橋』は、今までまちづくりの担い手にはならなかった昼間人口の「働く人」たちを中心にコミュニティを形成し、街の一役を担っていくことを目指した取り組みです。

「まちづくり」という言葉がこれだけ盛んな日本でも、東京の、さらに「オフィス街」と呼ばれるエリアでは、まだまだ縁遠いキーワードです。一方で、都心であればあるほど、人を集客したいというニーズは常にあり、他のエリアとの差別化を図ることも求められています。都心においても、ハード設備による地域活性ではなく、ソフト的なアプローチでそれを実現できないか。「日本橋」という、東京の中でもいわゆる古き伝統とオフィス街が融合する特殊なエリアで、それが議論されました。そのプロセスの一部を紹介したします。

 

フィールドリサーチ『まちへの視点』

まちづくりのプロジェクトでは、まず「その街」のことをよく知ることからはじめます。フィールドワークを行い、街に住む人、働く人たちに話を聞いてまわり、「日本橋」が街の内外から見てどのようなイメージを持たれているか定性・定量調査してまとめたものが『まちへの視点』というリサーチレポートです。地域内の人に聞く「Iの視点」、地域外の人に聞く「YOUの視点」、メディアの人に聞く「WEの視点」の三部構成となっています。

分析結果として特徴的だったのは、「日本橋」という言葉自体に対するパーセプション(認知)の課題。人は誰でも「街の名前」を聞いただけで「何かしらのイメージ」を想起していて、それぞれに「まちの人格」のようなものを持っています。日本橋の場合は、渋谷のような「流行感」や銀座のような「高級感」はなく、圧倒的に「伝統的」「歴史のある」というものでした。

一方で、もっともイメージが近かった街は「浅草」。つまり、日本橋という街は「観光地」的なイメージを持たれてしまっているものの、実際には浅草やその他の京都や奈良のような歴史的建造物は一切なく、実態との乖離があります。そのような中で、今後の街の未来はどうあるべきなのか。そもそも「誰が」それを描くのか。そこが大きな課題でした。

※リサーチ報告書『まちへの視点』のダウンロードはこちらから


 

「働く人」を中心としたNPO法人『日本橋フレンド』

昨今の日本橋の特徴は、何百年も続く企業が数多くある一方で、若手のクリエイターたちが移転してきているエリアも存在する、人種的に「新旧混在な街」であることです。しかし、両者には交流はほとんどありませんでした。そこに「架け橋」を作って、人的ネットワークを構築しようと立ち上がったのが『日本橋フレンド』というNPO法人です。

主に日本橋エリアに勤務する大手企業の会社員たちが集って、100年以上も日本橋で続いてきた企業と、この100年以内 に新しく活動を始めた企業や個人の人たちをゲストスピーカーに招いて開催する、月に一度の『アサゲニホンバシ』というイベントがメインの事業でした。

その日本橋フレンドとともに、これまでまちづくりの分野では主体と考えられてこなかった「働く人」を主役に、「勤務地(=働く場所)」の魅力を発掘して地域コミュニティを作ることを目的に始まった新たなプロジェクトが、『TOKYO24区 日本橋』です。

そもそも、「居住地」と「勤務地」が異なる生活を送っている都市生活者にとって、働く場所は「自分の街」ではありませんでした。一方で、もしも昼間の時間帯に地震等の災害が起きた場合、行政にとっては実際の住民ではない人たちも保護しなければならないという「昼間区民」の問題に頭を抱えていました。

このプロジェクトは、働く人たちが「昼間区民」のひとりとして、街に関わる入り口をつくる取り組みです。

新しい街の誕生『TOKYO24区 日本橋』

最初の活動は、この街に集う24区民にとっての住民票『24区民カード』を作ること。『24区民カード』とは、街歴(街に関わっている年数)を記載したパーソナルな情報のほか、「秘書が教える手土産MAP」「部長が教える接待MAP」など、ワーカーだからこそ知っている街に関する知見を地図にしたものです。ポストカードサイズなので、住民同士が名刺代わりに交流ツールとして使えるほか、観光目的の来街者に向けたガイドツールとしても活用できるものとなっています。

まちの観光案内所『日本橋案内所』の立ち上げ時にはコンセプト設計にもかかわり、「2.6×3メートル」サイズの巨大マップを作成し、その隣りにこのカードを陳列できる棚を設置してもらいました。

 

それぞれに高度なビジネス能力を持つワーカー同士がつながることで、今後日本橋の街にどのような貢献ができるのか、そのためのコミュニティづくりが続いています。

CREDIT

運営:NPO法人日本橋フレンド

企画&クリエイティブディレクション:アソボット

デザイン:富田光浩(ONE INC.)、Super Market Design Inc.

写真:任田辰平、谷口巧、ゆかい、sai、磯部昭子、小原太平