シブヤ大学

「学び」を通じた新しいまちづくりのカタチ

渋谷のまち全体を「大学のキャンパス」に見立て、公共施設や店舗などを「教室」にして、学びを通してまちの活性化を促すNPO法人です(2007グッドデザイン賞・新領域デザイン部門受賞)。

授業づくり

まちのあらゆるリソースを組み合わせた「学びの場」

2006年に「社会教育」と「まちづくり」を目的に設立された特定非営利活動法人シブヤ大学の主な活動は、「まちはキャンパスだ」をテーマに、人、建物、行政、企業など、まちのあらゆるリソースを組み合わせて「学びの場」をつくり、定期的に渋谷のまちを大学にするという活動です。開校以来、授業数は1500、教室数は350を超え、今までに参加した学生数は44,949人となりました(2023年3月現在)。

教える人は、「誰もが先生になれる」というコンセプトで、クリエイターや起業家、ショップの店員さんや観光案内所のスタッフ、行政職員や趣味に精通した市民、時に神社の宮司や芸子さんまで、何かしらまちに関係する人たちを先生に授業をつくってきました。また「教室」は、社会教育館などの公共施設のほか、カフェやショップを、神社や能楽堂を、時に緩和ケア病棟や高速道路の工事現場など、授業のテーマや先生のリクエストに合わせた場所を発掘しています。

 

 

開校当初は、「まちの先生」という自薦他薦の公募制度によって、まちに埋もれている授業のタネを見つけていきました。現在もこの制度は存在していますが、多様性のある授業をつくり続けるためには、この制度だけでは充分ではありませんでした。そこで生まれたのが「授業コーディネーター制度」です。

 

授業コーディネーターとは、まちに点在する情報をフリーランスのライターのように拾い集めてきて、最終的に「授業」というカタチに編集する人たちのこと。「一人目の生徒」として受けてみたい授業をつくったり、おもしろい人との出会いや、社会全体の関心テーマからつくることもあります。基本的には、月に一度開催される『全体会議』で授業のアイデアを話し合いますが、お互いの授業案を磨き合う『授業持ち寄り会』や、授業コーディネーターを育成するための『インナースクール』(スタッフ向けのセミナー)なども立ち上げ、生徒だけではなく、ボランティアスタッフ同士が学び合う環境づくりも試みました。

 


コミュニティづくり

テーマごとに趣味嗜好の近い仲間が集まるまちの「遊びの場」

シブヤ大学は「まちづくり」を掲げているため、「授業」以外の事業も展開しています。もっとも代表的なものは、テーマごとに趣味嗜好の近い仲間を集めて行う「サークル活動」があります。

 

たとえば、フランスで毎年夏至の日に行なわれる音楽祭「音楽の日」に憧れて「恵比寿にも音楽に溢れた幸せな一日を」と始まった合唱プロジェクト『Sing恵比寿』。「アジアがキャンパス」をコンセプトに、旅や異文化をテーマとした企画を通じてアジアの魅力を学びに翻訳していく『週末アジア旅倶楽部』。また、「目の見えない人にも映画が楽しめる環境を」と発足した『映画音声解説ゼミ』のような社会的なゼミ・サークル活動も生まれました。

 

 

すでに終了した活動の中にも、数々のユニークな活動があります。そのひとつが『キャンパスマップつくり隊』というもので、シブヤ大学に関連する「地図」を作成するため、教室として使用した店舗や、先生として関わったオフィスなどを掲載して、「シブヤ大学の生徒です!」と名乗ることで「コミュニケーションが生まれる地図」をコンセプトに制作されました。

たとえば、「実家から届いた野菜を持って行くと調理してくれるレストラン」や「記念日に好きな曲をかけてくれるバー」など、ささやかな人間関係が生まれる仕掛けとなっています。この活動をベースに、東京メトロのフリーペーパー『メトロミニッツ』の特集「渋谷ステイケーション」(2012/4/20号)が実現しました。

 

 


まちづくり

さまざまなパートナーと共に行う地域活動プロジェクト

シブヤ大学が手掛けるまちづくりの活動とは、まちの暮らしをほんの少し豊かにするための地域活動のことで、企業やNPO、町内会や自治会などさまざまな団体と協働しながら、地域の活性化や地域の課題解決を主な目的としたまちづくりプロジェクトを立ち上げて行っています。

たとえば、町内会の「お神輿の担い手不足」の相談に乗って若手の人材育成をしたり、まちの文化祭をつくりたいと始まった『恵比寿文化祭』の運営をしたり、代々木公園を運営する東京都公園協会と協働して、代々木公園で特別に一晩宿泊しながら行う世界初の“被”災訓練『SHIBUYA CAMP』などを開催しました。

また、地域住民と直接協働したプロジェクトもあります。渋谷区にある築40年のマンション内で行う「コミュニティづくり」で、きっかけは渋谷区の危機管理対策課から「渋谷区には集合住宅が多いため、マンション内の住民同士の関係性を強めたい」との相談があったことでした。具体的には、「防災」を軸に危機を共有できるコミュニティを形成していくこと。参考になりそうな日本全国の「防災コミュニティ」の事例をリサーチし、それらをマンション内で『シブヤ大学特別授業』として開講。最終的には「防災マニュアル」を住民と一緒につくり上げました。そのほか、地元企業との「オリジナルグッズ開発」を行うなど、地域活性化のためのさまざまな事業を展開しています。

 


ネットワークづくり

日本全国に広がるシブヤ大学の姉妹校ネットワーク

現在、「まち×大学」と名の付くプロジェクトは、全国に100以上あるとも言われています。シブヤ大学に視察に来た方が立ち上げたものもあれば、シブヤ大学とは違った独自のアイデアのものもありますが、シブヤ大学が公式に姉妹校として認定しているものは、『札幌オオドオリ大学』『京都カラスマ大学』『大ナゴヤ大学』『ひろしまジン大学』『福岡テンジン大学』『サクラ島大学』『琉球ニライ大学』『東京にしがわ大学』の計8校です。これらは、経済産業省の『平成21年度地域新事業創出発展基盤促進事業(コミュニティビジネスノウハウ移転・支援事業)』の助成でノウハウ移転事業として全国主要都市に移転されたものです。

 

CREDIT

運営:特定非営利活動法人シブヤ大学(設立:2006年9月)

企画コンセプト:アソボット

デザイン:奇藤文平(文平銀座)

コピーライティング:岡本欣也

WEBサイト:CAMP4