川崎ブレイブサンダース
70年以上にわたって続いてきたバスケットボールの名門、川崎ブレイブサンダース。運営会社が変わった2018年からブランディング及びクリエイティブに関わる全般を担当しました。
前オーナー会社からどうチームを引き継ぐか
70年以上にわたって続いてきたバスケットボールの名門、川崎ブレイブサンダース。TOSHIBAからDeNAへ運営会社が変わったタイミングで、ブランディング及びクリエイティブに関わる全般を担当しました。
2018-19シーズンが開幕するのは10月初旬。その年の1月から会場を訪れるファンの方々や最寄り駅を歩く街の人々、そして前チームの運営スタッフのへのインタビューを開始。そのデータをもとに、チーム名、チームカラー、チームロゴをどうするか? というところから入りました。
DeNAが引き継ぐということで、どうしても横浜DeNAベイスターズのイメージが強く「青くなるの?」「横浜に移転するの?」「チーム名はベイとかスターがつくの?」というコアファンたちからの不安の声が多くありました。DeNA体制初代代表は「継承と革新」という明確なテーマを掲げていましたので、チームを支えてきてくれた人たちの想いをしっかり受け継いで、新しくすべきところをドラスティックに変えるという棲み分けをするのが大きなポイントとなりました。
結果的に、チーム名とチームカラーは変更しないという選択をしたうえで、チームロゴを刷新するかたちをとりました。ここまでチームを育んできた川崎の方々へのリスペクトを示すと共に、新たなファンへの認知拡大の両方を実現するうえで非常に重要な判断だったと思います。
Bリーグ全体を触発するためのクリエイティブ施策
当時、Bリーグの仕事をはじめるというと必ずといっていいほど「スラムダンクは読んでたけどなあ」とか「NBAを見てるからなあ」という反応が返ってきました。競技人口は野球よりもずっと多いのに、大人になるとバスケ観戦は海の向こうでやっているNBAのみ(すごくよくわかるのですが)という人が大半を。占めました。しかし、事前のコアファンへのインタビューから、日本のバスケットボールの魅力は、ド派手なプレーで魅せるNBAとはまた違ったところにあることはわかっていましたし、人気スポーツの代表格である野球とサッカーにはない"集客できるコンテンツ"となり得る要素も発見できていました。
- 常に音楽が流れていて小さい子どもでも飽きがこない
- 点が入りつづけているのでスポーツ観戦初心者でも楽しめる
- 試合時間が短いため親子でほどよく楽しめる
- バスケットボール競技層は男女比がほぼ同じ
- バスケットボール経験者の数が他のスポーツより多い
他にも多数あるのですが、これらは川崎に限ったことではなくBリーグ全体が有するポテンシャルそのものでした。それをどう引き伸ばしていくかを、チームの各部署からなる立ち上げメンバーと共に数えきれないほどの議論とPDCAを通してひとつひとつの施策を研磨していきました。
強豪であると同時に、クリエイティブでもBリーグを牽引するために
川崎ブレイブサンダースは、TOSHIBA時代から強いチームでした。リーグでも、天皇杯でも何度も優勝を手にしていますし、毎シーズンプレーオフの常連です。しかし、かつてチャンピオンシップ決勝が代々木体育館で開催されたとき、相手チームのサポーターでいっぱいになったことがあります。しかも、相手チームの方がずっと遠いところから来たのです。中立の開催地なのに、相手のホームのような雰囲気。これは選手がどれだけ頑張ってもどうにかすることはできない領域。つまり、運営側の課題です。
フロントもチームスタッフもその日のことを胸に刻み、二度と同じことが起きないよう、ファンの母数を増やすことと、リレーションの強化に全力をあげてきました。
現在では欠かすことのできないデジタルマーケティングはもちろんのこと(YouTubeやSNSの登録者数で数々の記録をつくっているのですがそれは割愛します。詳細はマーケティング担当藤掛直人著『ファンをつくる力 デジタルで仕組み化できる、2年で25倍増の顧客分析マーケティング』(日経BP)にあります)、一度訪れた観客は必ずリピーターになってもらうための演出があります。
ホームの会場となるとどろきアリーナの敷地内に入ると、川崎名物をはじめとした美味しいフードを提供するキッチンカーが軒を連ねています。さらに会場内には、選手たちのヴィジュアルで埋め尽くされ、初めての人でも親しみを感じ、わかりやすく観戦するためのコミュニケーションが散りばめられています。
試合前の練習から専属のDJが音楽を流して盛り上げ、その間に流れる映像コンテンツも訪れた人を楽しませる重要なコンテンツとして位置づけています。そして、試合開始直前の選手紹介映像と会場演出で集まったお客様の気持ちをピークに持っていきます。大切なことは、試合が開始する瞬間には「今日のチケット代分は満足できた」と思ってもらえることです。
試合がはじまれば日本屈指の選手たちがプレーで魅了、専属アーティストが作曲したオリジナルの音楽でさらにヒートアップしていきます。優勝を左右するような重要な試合であれば感動はなおさら大きくなります。
勝利や優勝は、訪れてくれる人たちにとってのご褒美で、勝敗に関わらず川崎だからこそできる体験を堪能してもらうというのが、川崎ブレイブサンダースに関するあらゆるクリエイティブの前提にあります。
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